プライバシー特化型のレイヤー1ブロックチェーンであるSecret Networkの開発チームは、長年利用してきたCosmosエコシステムから、Ethereumのレイヤー2ソリューションであるArbitrumへ移行する提案を行いました。この決定の背景には、急速に進化するAI技術によって、古いスマートコントラクトのコードを標的とした攻撃リスクが高まっているというセキュリティ上の懸念があります。また、2026年6月に発生したブリッジのハッキング被害や、Cosmosエコシステムにおける流動性の低下も移行を後押しする要因となっています。この提案がガバナンス投票で承認されれば、2026年9月よりトークンの移行プロセスが開始される見通しです。
AIの進化がもたらす古いコードへのセキュリティ脅威
Secret Networkが移行を検討する最大の理由は、AI技術の進歩に伴うセキュリティリスクの増大です。開発チームは、AIツールの進化によって古いコード(レガシーコード)の脆弱性を分析し、悪用するコストが劇的に低下していると指摘しています。
従来、スマートコントラクトの脆弱性を発見して悪用するには、高度な専門知識と手作業による解析が必要でした。しかし、高度なAIモデルの登場により、コードの読解や前提条件の追跡、見落とされていた例外的なケース(エッジケース)の検出が容易になり、攻撃者が脆弱性を悪用するハードルが下がっていると説明されています。チームはセキュリティリスクを最も深刻に捉えていると述べており、AIアシストによる攻撃の脅威からネットワークを守るための抜本的な対策が必要であると判断した模様です。
ブリッジハックの教訓とCosmosエコシステムの変化
今回の移行提案には、過去の具体的なハッキング被害と、エコシステム全体の変化も影響しています。
2026年6月、Secret Networkと接続するAxelar-Secret IBCブリッジにおいて、無限ミントの脆弱性を突いたハッキングが発生し、約470万ドル相当の資産が流出しました。この事件ではSecret NetworkのネイティブトークンであるSCRT自体への被害はなかったものの、古い統合コードやクロスチェーン運用におけるセキュリティリスクを浮き彫りにしました。
さらに、Secret Networkが2020年からスマートコントラクトを稼働させてきたCosmosエコシステムにおいて、流動性が低下している現状も指摘されています。開発チームによると、Cosmos上の開発者やプロジェクトが他のエコシステムへ移行する傾向が見られる一方、Arbitrumは深い流動性や豊富な開発者向けツール、ウォレットや取引所のサポートが整っているとされています。
Arbitrumへの移行計画と今後のスケジュール
Secret Networkは、今回の移行によってセキュリティを強化するだけでなく、同ネットワークが注力する機密AI(Confidential AI)や検証可能な計算(Verifiable Compute)といったアプリケーション分野へのシフトを加速させる狙いがあります。Ethereumのレイヤー2であるArbitrumへ移行することで、Ethereumエコシステムが持つ高い流動性と開発インフラの恩恵を受けることができます。
この移行計画は、コミュニティによるガバナンス投票での承認が必要となります。提案が承認された場合、2026年9月1日にSCRTトークンの保有残高に関する1回限りのスナップショットが実施される予定です。このスナップショットに基づき、Arbitrum上で新しいERC-20規格のSCRTトークンコントラクトが発行され、対象となる保有者に新トークンが割り当てられる計画となっています。
ポイント
- AI技術の急速な進化により、古いスマートコントラクトコードの脆弱性を分析・悪用するコストが低下し、セキュリティリスクが高まっていると指摘されています。
- 2026年6月に発生したAxelar-Secret IBCブリッジでの約470万ドルの資産流出事件が、古い統合コードへの危機感を強める要因となりました。
- Cosmosエコシステムにおける流動性の低下や開発者の流出を受け、豊富な流動性と開発ツールを備えたEthereumのレイヤー2であるArbitrumへの移行が提案されました。
- 提案がガバナンス投票で承認されれば、2026年9月1日にトークン残高のスナップショットが実施され、Arbitrum上で新しいERC-20規格のSCRTトークンが発行される予定です。