欧州における暗号資産市場規制であるMiCAR(Markets in Crypto-Assets Regulation)の移行期限が2026年7月1日に終了し、EU(欧州連合)域内でのサービス提供には完全な認可が必須となりました。これにより、これまでの国ごとの断片的な登録制度から、EU単一の共通ルールに基づくライセンス制市場への移行が完了しました。認可を取得できた事業者が全体の約2割にとどまる中、巨大な欧州市場における事業者の淘汰と、大手による買収やサービス統合といった市場の再編が急速に進んでいます。
MiCARの完全施行とCASP認可の義務化
欧州における暗号資産の包括的な規制枠組みであるMiCARの移行期間が、2026年7月1日をもって終了したとされています。ルクセンブルク金融監督委員会(CSSF)の発表によると、今後は暗号資産サービスプロバイダー(CASP)としての認可を受けていないバーチャルアセットサービスプロバイダーは、EU域内でのサービス提供が認められなくなりました。
これまでEU全27加盟国で個別に存在していた断片的な登録モデルに代わり、MiCARのもとではEU全域で共通して適用される単一のルールブックが導入されます。欧州証券市場監督機構(ESMA)によると、この共通ルールは透明性、開示、認可、そして資産参照トークンや電子マネートークンを含む暗号資産活動の監督をカバーしているとされています。これにより、事業者は1つのCASP認可を取得すれば、EU加盟国全域でサービスを展開できる単一のパスポート制度の恩恵を受けられるようになります。
市場の淘汰と事業者による買収・統合の動き
MiCARの完全施行は、欧州で活動する暗号資産事業者の数を大幅に絞り込む結果となっています。フランスのメディアであるル・モンドの報道によると、欧州で事業継続に必要な認可を取得できた事業者は、約1,200社のうちおよそ230社にとどまったとされています。認可を得られなかった残りの多くの事業者は、EU市場からの撤退、売却先の模索、あるいはEU顧客へのアクセス喪失を余余儀なくされています。
こうした厳しい競争環境の中で、ライセンスを保有する事業者へのサービス集約や買収の動きが活発化しています。例えば、OSLグループによる決済プロバイダーであるBanxaの買収と、それに伴うOSLのオーストリアにおけるEU認可取得はその一例とされています。この事例は、暗号資産の保管(カストディ)、取引、送金、そして法定通貨と暗号資産の換金といったライセンス業務が、欧州におけるサービス流通の中心になりつつあることを示しています。また、決済手段が規制対応の取引、カストディ、ステーブルコインサービスと統合される動きは、今後の業界における主要なトレンドになる可能性があると見られます。
巨大な欧州市場におけるビジネスへの影響
欧州の暗号資産市場は、規制の変更が競争環境を大きく塗り替えるほどに極めて巨大な規模を誇っています。ブロックチェーン分析企業であるChainalysisのデータによると、欧州地域における暗号資産の月間取引高は2024年12月に2,340億ドルへと回復しました。また、2024年7月から2025年6月までの期間において、ドイツ、フランス、イギリスなどの主要な欧州市場には、それぞれ数千億ドル規模の暗号資産価値が流入したとされています。
このような巨大な市場が厳格な認可制へと移行したことは、Web3ビジネスを展開する企業にとって、コンプライアンス(法令遵守)が事業継続の絶対条件となったことを意味しています。認可を取得できた一部の事業者にとっては、EU全域にわたる巨大な単一市場へのアクセスが確保される一方、参入障壁が高まったことで、新規参入や中小規模の事業者にとっては厳しい競争環境が続くものと見られます。
ポイント
- 2026年7月1日にMiCARの移行期間が終了し、EU域内でのサービス提供にはCASPとしての完全な認可が必須となりました。
- 認可を取得できた事業者は約1,200社中およそ230社にとどまり、多くの事業者が市場からの撤退や売却を余儀なくされています。
- 国ごとの登録制度からEU全域で共通する単一の共通ルールへと移行したことで、1つの認可でEU全域に展開できるパスポート制度が適用されます。
- OSLによるBanxaの買収とオーストリアでの認可取得のように、決済手段、カストディ、取引などを統合した規制対応サービスの構築が進んでいます。
- 月間2,340億ドルの取引高を誇る巨大な欧州市場において、ライセンスを保有する事業者への市場集約と競争環境の再編が急速に進行しています。