米証券取引委員会(SEC)の暗号資産タスクフォースは2026年7月14日、分散型取引所(DEX)であるハイパーリキッド(Hyperliquid)のエコシステム関係者らと会合を行い、暗号資産規制や分散型無期限先物市場のあり方について協議しました。今回の会合は法律事務所からの要請をきっかけに実現したもので、急速に取引規模を拡大するハイパーリキッドの技術や市場インフラについてSEC側が説明を受ける形で行われました。規制方針の明確化を目指すSECの新たな方針も背景にあり、DeFi(分散型金融)領域における規制当局との直接対話として注目を集めています。
会合の背景と出席した主要関係者
今回の会合は、法律事務所サリバン・アンド・クロムウェルのパートナーであるナターシャ・ヴァサン氏が提出した書簡がきっかけとなり、2026年7月14日に開催されました。
会合の出席者には、以下の主要な関係者が名を連ねています。
ハイパーリキッド・ポリシー・センターは、ハイパーリキッドの普及を後押しする目的で設立された業界団体で、エコシステム関係者から資金提供を受けています。同センターからはCEOを務めるジェイク・チャービンスキー氏らが出席しました。なお、同センターは分散型市場やオンチェーンデリバティブ市場において、明確かつ実行可能な規制経路の確立を目指す非営利の研究・擁護団体とされています。
ハイランド・ラボ(Highland Labs)は、ジェフ・ヤン氏らが共同創業した、ハイパーリキッドのソフトウェア開発を主導する企業です。
XYZ(XYZ Ltd.)は、ハイパーリキッド上で独自の規格を用いて株式や商品など伝統的資産の無期限先物市場を展開する組織で、取引サービス「trade.xyz」を運営しています。同社からはコリンズ・ベルトン氏が出席しました。
サリバン・アンド・クロムウェルからは、ナターシャ・ヴァサン氏を含む弁護士4人が出席しました。
会合では、出席者からハイパーリキッドの技術、市場構造、および関連エコシステムの参加者について説明する資料が提出され、SECのスタッフがこれを検討しました。
ハイパーリキッドの技術的特徴と取引規模の拡大
ハイパーリキッドは、取引規模が急拡大している分散型デリバティブ取引プラットフォームです。直近では、建玉(未決済の取引残高)が2026年の最高水準となる約111億ドルに達しています。
この成長を支える要因として、以下の技術や規格が挙げられます。
HIP-3(Hyperliquid Improvement Proposal 3)は、開発者が独自の無期限先物市場を許可なし(パーミッションレス)で構築・展開できる規格とされています。
現実資産(RWA)のトークン化取引としては、XYZ社が運営する「trade.xyz」などを通じて、株式や商品などの伝統的資産を対象とした無期限先物市場が展開されています。このHIP-3を用いた市場が建玉全体の約37億ドルを占めており、現実資産のトークン化取引が過去最高水準となったことが背景にあります。
業界への影響と規制対話の意義
今回の会合は、ハイパーリキッドの仕組みや技術を説明する対話の場であり、SECが同プロトコルやHIP-3商品、あるいは米国内での取引を公式に承認したわけではないと現地報道は指摘しています。しかし、Web3業界における規制対話の観点からは重要な一歩と見られます。
今回の会合は、SECのポール・アトキンス委員長が2026年の規制方針について声明を発表した約1週間後に行われました。同委員長は、暗号資産の資金調達、カストディ、オンチェーンでのトークン化証券取引に関して明確なルールを整備する方針を示しており、適用除外やセーフハーバー(法的制裁の免除規定)の活用も検討しているとされています。
また、SECの暗号資産タスクフォースはハイパーリキッド陣営に限らず、2026年3月20日にはリップル・ラボやそのプライム部門、法律事務所ケイテン・マッチン・ロスマンとの会合を開くなど、業界各社との対話を継続的に重ねています。
ハイパーリキッドやウォレットサービス「ファントム」の関連団体は、以前にも米商品先物取引委員会(CFTC)に対して、非カストディアル型プロトコルの法的取り扱いの明確化など3点を求める改善要望を提出しています。今回のSECとの対話も、DeFiや分散型プロトコルの適切な規制枠組みの構築に向けた、業界側の積極的なアプローチの一環と位置づけられます。
ポイント
- SECとハイパーリキッド陣営が直接会合:2026年7月14日、SECの暗号資産タスクフォースが、ハイパーリキッド・ポリシー・センター、ハイランド・ラボ、XYZ、サリバン・アンド・クロムウェルの代表者と規制を巡り会合を行いました。
- 建玉が過去最高の111億ドル規模に:ハイパーリキッドの建玉は直近で約111億ドルに達し、そのうち株式や商品などの伝統資産を対象とするHIP-3市場が約37億ドルを占めています。
- HIP-3による伝統資産のトークン化:XYZが運営するtrade.xyzがHIP-3規格を用いて、株式や商品などの現実資産の無期限先物市場を展開しており、これが取引規模の拡大に寄与しています。
- SEC新委員長の方針と合致する対話:ポール・アトキンスSEC委員長が暗号資産やトークン化証券の明確なルール整備とセーフハーバーの検討方針を示した直後に行われており、今後の規制枠組み構築に向けた重要な対話として注目されます。
- 公式な承認ではない点に留意:今回の会合は技術と市場構造を説明する場であり、SECがハイパーリキッドや米国内取引を承認したことを意味するものではありません。