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ブロックチェーン総研by Pacific Meta

GENIUS法とは?米国ステーブルコイン規制の要点と日本企業の実務対応

GENIUS法とは、米国で決済用ステーブルコインを発行できる者を許可を受けた発行者に限り、発行残高を1対1以上で裏付ける準備資産の保有を義務づけた連邦法です。2025年7月18日の大統領署名で成立し、遅くとも2027年1月18日までに施行されます。

ドル建てステーブルコインの規制は、どう変わる?
従来は州ごとの送金業規制に委ねられていたドル建てステーブルコインが、GENIUS法で許可された発行者の枠組みに移る。

これまで州ごとの送金業規制に委ねられていたドル建てステーブルコインが、連邦の発行者ライセンス制へ移ります。人の決済だけでなく、AIエージェントが支払いに使う手段もドル建てステーブルコインの上に載りつつあり、その基盤となる発行のルールが連邦法で定まりました。

USDC等の取扱いや米国発行体との提携を考える日本の金融機関・事業会社は、提携先が許可された発行者かを前提に設計を見直すことになります。

  • 米国で決済用ステーブルコインを連邦法で定めた制度
  • 施行は遅くとも2027年1月18日、最終規則次第で前倒し
  • 発行者は1対1の準備資産保有と月次開示、利息支払い禁止
  • 外国発行者のコインは同等性判断とOCC登録が米国提供の条件
  • 日本企業は取扱いコインの発行体の適格性確認から着手

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監修:ブロックチェーン総研編集部

株式会社Pacific Metaが運営する編集チームです。ステーブルコイン、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン、NFTなどのトークン活用や、オンチェーン金融、AI×ブロックチェーン領域の事業開発・実装、暗号資産の基礎知識と国内取引所の使い方まで、ブロックチェーン事業の支援で得た知見をもとに記事の企画・執筆・監修を行っています。編集部や運営会社の詳細は公式サイトと編集方針をご覧ください。

GENIUS法とは

GENIUS法の正式名称は「Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act」で、略称はGENIUS Actです。法律の目的は決済用ステーブルコイン(payment stablecoins)の規制で、米国で初めてステーブルコインを連邦法の枠組みで定義した制度にあたります。

正式名称、公法番号、成立日、対象、規制当局を並べる。
GENIUS法の基本情報
項目内容
正式名称Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act
公法番号Public Law 119-27(第119議会、S. 1582)
成立2025年7月18日(大統領署名)
対象決済用ステーブルコインとその発行者
主な規制当局連邦の決済用ステーブルコイン規制当局(OCC等)・財務長官・州規制当局

以後、米国で流通するドル建てステーブルコインの発行体は、この法律の枠内で事業を組み立てることになります。条文の原文は公法119-27の全文(GPO)で確認できます。

GENIUS法の成立と施行のスケジュール

GENIUS法は上院で審議・可決されたのち、2025年7月17日に下院で可決され、翌18日の大統領署名で成立しました。成立と施行は別の段階で、施行日は条文で「早い方」の方式で決まります。

下院可決、署名、規則制定の期限、施行の上限日を順に示す。
成立から施行までの日程
段階状態日付
上院可決済審議2025年5月21日〜6月17日
下院可決済2025年7月17日
署名(成立)済2025年7月18日
規則制定の期限条文上の期限2026年7月18日(成立後1年)
施行未施行(予定)遅くとも2027年1月18日

施行日は、成立から18か月後の日と、主たる連邦規制当局が最終規則を公表してから120日後の日の、いずれか早い日です。18か月後は2027年1月18日にあたるため、最終規則が早く出れば施行はさらに前倒しになります。

規則づくりは進んでいました。OCCは2026年2月25日に施行のための規則案を公表し、財務省のFinCENとOFACは同年4月8日にAML・制裁遵守の共同規則案を公表しています。財務省は同年4月3日、州の制度が連邦と実質的に同等かを判断する原則の規則案を連邦官報に掲載しました。

準備期間は2027年1月を上限として逆算するのが前提になります。

GENIUS法が定める発行者の要件と義務

GENIUS法では、許可された決済用ステーブルコイン発行者以外が米国で決済用ステーブルコインを発行することは違法です。許可された発行者は米国で設立された者で、預金保険対象金融機関の子会社、連邦適格発行者、州適格発行者の3類型に分かれます。

米国で設立された許可された発行者を、銀行子会社、連邦適格、州適格の3類型に分ける。
許可された発行者の3類型
義務内容
準備資産発行残高を少なくとも1対1で裏付ける識別可能な資産を保有
対象資産現金、連銀口座残高、要求払預金、残存93日以内の米国債、短期国債担保のレポ等
開示準備資産の構成と流通残高を月次でウェブサイトに公表
利息保有のみを理由とする利息・利回りの支払いを禁止
破綻時保有者の償還請求を準備資産から優先して扱う
AML銀行秘密法上の金融機関として制裁・顧客確認等の連邦法を適用

発行残高100億ドル以下の州適格発行者は、連邦と実質的に同等な州の制度を選べます。100億ドルに達すると、原則360日以内に連邦の枠組みへ移ります。米国のドル建てステーブルコインは、発行体の類型で信頼性と提携条件が決まる構造です。

準備資産、対象資産、月次開示、利息の禁止、破綻時の優先、AMLの六つの義務。
発行者に課される主な義務

外国発行者のコインの扱い

外国で発行されたステーブルコインを米国でデジタル資産サービス提供者(DASP)が扱うには条件があります。本国の規制・監督が本法と同等と財務長官が判断し、発行者がOCCに登録していることなどです。米国顧客の流動性需要を満たす準備資産を米国の金融機関に置くことも求められます(相互協定による例外あり)。

本国制度の同等性判断、OCC登録、米国での準備資産保有、連邦官報での公表の流れ。
外国発行のコインを米国で扱う条件

同等性の判断は、財務長官がステーブルコイン認証審査委員会の他の委員の推奨を受けて行い、理由を連邦官報で公表します。

仲介者への規制

DASPとは、米国内で報酬を得てデジタル資産の交換・移転等を業として行う者を指します。成立から3年後の2028年7月18日以降、DASPが米国内の者に許可されていない発行者のコインを提供・販売することは違法になります(例外規定あり)。

成立から3年後の2028年7月18日を境に、DASPが提供できるコインが変わる。
2028年7月の前と後のDASP

日本の電子決済手段制度との違い

日本では、法定通貨建てで発行価格と同額での償還が想定される一部のステーブルコインについて、資金決済法上の「電子決済手段」として整理される枠組みが設けられています。改正資金決済法は2026年6月1日に施行され、裏付け資産の厳格な管理義務などが加わりました。

制度の軸、発行主体、裏付け、外国発行の扱いを日米で比べる。
米国と日本の制度の比較
比較項目米国(GENIUS法)日本(資金決済法)
制度の軸発行者のライセンス制電子決済手段としての整理
発行主体銀行子会社・連邦適格・州適格の3類型資金移動業者など(例: JPYCは資金移動業型)
裏付け1対1以上の準備資産と月次開示裏付け資産の厳格な管理義務
外国発行同等性判断とOCC登録が条件日本の要件の確認が必要

日本の具体例であるJPYCは、JPYC株式会社が資金移動業者として発行する電子決済手段です。米国の発行体のコインを日本で扱う場合、日本の要件と米国発行体の規制状況の両方を確認する必要があります。片方だけを見た設計は、どちらかの制度変更で前提が崩れます。

日本企業への影響と対象になるケース

GENIUS法の影響は、米国との接点の持ち方で変わります。次の表は自社がどの論点を確認すべきかの目安で、法的な当てはめを示すものではありません。

発行、米国での提供、米国発行体のコインの取扱い、受取だけの4つの立場で確認する論点。
米国との接点ごとの確認論点
確認する問いYESの場合に確認する論点
米国の居住者向けにステーブルコインを発行するか許可された発行者の類型と米国での設立の要否
米国内でデジタル資産の交換・移転を業として行うかDASPとしての扱いと取扱いコインの制限
米国発行体のコイン(USDC等)を日本で取り扱うか発行体の適格性・準備資産開示・日本の要件との整合
決済や提携で米国発行体のコインを受け取るだけか提携先の発行体の適格性と契約条件

発行する立場では、米国で事業を行う限り許可された発行者の枠組みが前提になります。取り扱う立場では、2028年7月以降に米国内で提供できるコインが絞られるため、取扱いコインの発行体が許可を得ているかが商品設計を左右します。受け取るだけの立場でも、提携先の規制状況は決済の継続性に関わります。

AIエージェントによる支払いでも、ドル建てステーブルコインが主要な手段になる流れがあります。Pacific Metaが2026年4月に始めたステーブルコイン決済・AIエージェント決済の導入支援のように、エージェント決済を企業の業務に組み込む動きも出ています。発行体の規制が固まることで、エージェント決済に使うコインの選定基準もはっきりします。

GENIUS法を踏まえた実務対応チェックリスト

実務の起点は、自社が扱う・受け取るコインと、その発行体の規制状況の棚卸しです。米国の規則が確定する前でも、確認先と判断の材料は揃えられます。

コインと発行体の一覧化、接点の判定、適格性と開示の確認、日本の要件と契約の見直しの順に進める。
実務対応の進め方
順番作業主担当期間の目安
1取扱い・受取予定のコインと発行体の一覧化新規事業2〜4週間
2米国との接点(発行・提供・受取)の判定法務2〜4週間
3発行体の適格性と準備資産開示の確認法務・財務1〜2か月
4日本の電子決済手段の要件との整合確認法務・コンプライアンス1〜2か月
5提携契約・AML体制の見直し法務・コンプライアンス2〜3か月

工程表を進めるうえで、論点ごとの確認事項と完了の判定を次の表にまとめました。

発行体、米国での提供、日本の要件、契約とAMLの四つの観点で確認する。
確認項目のチェックリスト
論点確認すること確認先完了の判定
発行体の適格性取扱いコインの発行体が許可された発行者の3類型のどれか発行体の公表資料・OCCの公表全コインの類型が一覧に記入済み
米国での提供米国内の利用者に提供する経路があるか自社のサービス設計書提供経路の有無を法務が判定済み
準備資産の開示月次の準備資産構成が公表されているか発行体のウェブサイト直近の開示内容を記録済み
日本の要件との整合電子決済手段としての扱いと取扱業者の要件金融庁の公表資料日米両方の要件を対照表にまとめ済み
AML・制裁顧客確認と制裁スクリーニングの体制FinCEN・OFACの規則案自社の手順との差分を洗い出し済み
提携契約発行体の規制変更時の条項提携先との契約書規制変更時の対応条項を合意済み

AML・制裁の行は、ブロックチェーン分析ツールの導入とあわせて検討されることが多く、Pacific MetaもElliptic社ツールの日本での導入支援をPRしています。

米国の規則案は確定前で、日本の電子決済手段の要件も2026年6月の改正で変わりました。取扱いコインの選定や提携条件は、この2つの制度を同時に見ないと決められず、法務・財務・事業部門のどこか1つでは判断を閉じにくい論点です。

日米の制度を前提にした取扱い・提携の設計は、ステーブルコイン導入の支援内容にまとめています。

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自社でもステーブルコインを保有・運用し、決済まで実践しています。要件が固まっていない段階のご相談も歓迎です。

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GENIUS法成立後の市場の動き

成立後、米国では銀行が自らステーブルコインを発行する動きが出ています。SoFi Technologiesは2025年12月18日、OCC監督下の国法銀行SoFi Bank, N.A.が発行する米ドル建てステーブルコイン「SoFiUSD」の提供開始を発表しました。現金で1対1に全額を準備し、銀行・フィンテック・事業会社向けのインフラとして提供するとしています。

銀行の発行、市場の規模、国内の議論の三つの動きと、日本企業への意味。
成立後に見られた市場の動き

市場規模も大きくなっていました。米ドル建てステーブルコインの流通総額は、2026年10月時点で約3,000億ドル超でした(DefiLlama集計)。

国内でも、金融庁・SMBC・JPYC・Circle等が登壇したJapan Stablecoin Summit #2(Pacific Meta主催)で、規制当局と発行体が同じ場でステーブルコインの論点を扱いました。銀行発行のコインが増えれば、日本企業にとって提携先の候補が広がることになります。

GENIUS法の未確定の論点と今後の見通し

条文は成立後1年以内の規則制定を求めていましたが、2026年10月時点で確認できたのはOCCやFinCEN・OFACの規則案の公表までです。最終規則の内容と公表時期は、施行日の前倒しにも関わります。

OCCの規則案、財務省の州制度の原則、FinCENとOFACの共同規則案を順に示す。
2026年に公表された規則づくり
  • 最終規則の内容と公表時期
  • 州の制度が連邦と実質的に同等と判断される範囲
  • 外国発行者の本国制度に対する同等性判断の対象国
  • 市場構造を定めるCLARITY法の行方

CLARITY法(Digital Asset Market Clarity Act)はデジタル資産の市場構造を定める法案で、上院銀行委員会は2026年1月、委員会での審議(マークアップ)を控えて論点の資料を公表していました。

発行体、準備資産、規制、スマートコントラクト、カウンターパーティーのリスクと未確定の規則。
取扱いと提携で見ておくリスク

取扱い・提携の設計で見ておくリスクは、発行体リスク、準備資産リスク、規制リスク、スマートコントラクトリスク、カウンターパーティーリスクの5つです。施行規則が確定するまで、設計は見直し前提で進めることが求められます。

よくある質問

GENIUS法で日本円ステーブルコインは影響を受けますか

GENIUS法は米国で発行・提供される決済用ステーブルコインを対象とする法律です。日本国内で発行・流通する日本円建てのコインは、日本の資金決済法の枠組みで扱われます。ただし米国の利用者に提供する場合は、外国発行者の扱いを確認する必要があります。

USDTのような米国外の発行体のコインはどうなりますか

外国発行者のコインを米国のDASPが扱うには、本国制度の同等性判断やOCC登録などの条件があります。成立から3年後の2028年7月18日以降は、許可されていない発行者のコインを米国内の者に提供・販売することが原則として違法になります。個別のコインがどう扱われるかは、今後の判断を確認する必要があります。

外国発行のコインの米国での扱いについての誤解と実際。
外国発行のコインでよくある誤解

GENIUS法はいつ施行されますか

成立から18か月後の2027年1月18日と、最終規則の公表から120日後の早い方です。最終規則の公表が早ければ、2027年1月より前に施行されます。

利息のつくステーブルコインは発行できますか

GENIUS法は、許可された発行者が保有のみを理由に利息・利回りを支払うことを禁止しています。現金・トークン・その他の対価の形を問いません。米国の決済用ステーブルコインは、利回り商品ではなく決済手段として設計することが前提になります。

GENIUS法のまとめと日本企業の次の一歩

GENIUS法は、米国のドル建てステーブルコインを許可された発行者による1対1準備の決済手段として定めた連邦法で、遅くとも2027年1月18日に施行されます。日本企業にとっての要点は、取扱い・受取予定のコインの発行体が許可を得ているかと、日本の電子決済手段の要件との整合です。

許可された発行者、1対1の準備資産、施行の上限日を押さえ、発行体の適格性と日本の要件を確認する。
GENIUS法の要点と次の一歩

米国の最終規則が出るまで論点は動き続け、日本側の要件と組み合わせた判断が求められます。自社のコイン選定や提携条件をどこまで先に決めておくかは、制度と事業計画を並べて検討する必要があります。

免責事項

2026年10月16日時点の公表資料に基づく制度の一般的な整理です。個別の事業スキームがGENIUS法や日本の資金決済法の対象になるかの判断は、弁護士や当局への事前相談で確認してください。基準日以降の規則の公表や改正で内容が変わる場合があります。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言・投資助言ではありません。暗号資産には価格変動リスクがあり、投資元本を失う可能性があります。個別の判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。

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