セキュリティトークンとは?仕組み・種類から不動産STまでわかりやすく解説

セキュリティトークンとは、株式や社債、不動産などの資産に対する権利をブロックチェーン上で発行・管理できるようにしたデジタル証券です。2020年5月に施行された改正金融商品取引法で制度上の位置づけが整い、国内では大手金融機関による発行が実務の段階に入っています。

この記事では、次の点を順に整理します。

  • セキュリティトークンの定義と、暗号資産・NFTとの違い
  • 発行から流通までの仕組みと、裏付け資産による種類
  • 国内の主な発行事例・取扱サービスの一覧と、不動産STの分配金の考え方
  • 企業がSTOによる資金調達を検討するときの進め方

本記事は2026年8月2日時点の公表資料に基づいています。

セキュリティトークンとは

セキュリティトークンとは、株式・社債・不動産の信託受益権といった有価証券をブロックチェーン上で発行・管理できる形にしたデジタル証券です。英語のSecurity(証券)をトークン(電子的な証票)にしたもので、STと略されます。

理解の出発点は、金融商品取引法(金商法)の規制対象になるという点です。日本では、こうしたトークンは金商法上「電子記録移転権利」などとして整理され、株式や社債と同じ投資家保護のルールの下で発行・販売されます。

値動きを前提に取引される暗号資産とは、この点で法律上の扱いが根本から異なります。両者の違いは、のちほど比較表で整理します。

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セキュリティトークンが注目される背景

転機は、2020年5月施行の改正金融商品取引法です。ブロックチェーン上で移転できる有価証券の権利が法律で明確に定義され、国内の発行が実務段階に入りました。

市場はすでに具体的な規模を持っています。大和証券の公表資料によると、国内セキュリティトークンの市場規模は1,600億円を超えています(2025年5月時点)。現時点の発行はオフィスビル・ホテル・物流施設といった不動産を裏付けとするものが中心です。

発行を支える基盤にも、三菱UFJ信託銀行が主導して設立したProgmat(プログマ)や、野村グループが参画するBOOSTRY(ブーストリー)など、大手金融機関が名を連ねます。この動きは、現実の資産をブロックチェーン上で扱うリアルワールドアセット(RWA)トークン化という世界的な潮流の一部です。資産と決済がブロックチェーン上で完結するようになれば、その先にはAIエージェントが資産の管理や支払いを担う経済圏も見据えられています。

セキュリティトークンと暗号資産・NFTとの違い

セキュリティトークンを理解する近道は、名前が似たトークンとの違いを押さえることです。裏付けとなる資産の有無と、適用される法律が主な分かれ目になります。

セキュリティトークンと暗号資産・NFT・ステーブルコインの比較表

暗号資産・NFT・ステーブルコインとの比較

項目セキュリティトークン暗号資産NFTステーブルコイン
何を表すか株式・社債・不動産など有価証券の権利それ自体が取引対象のデジタル資産デジタルアートなど一点ものの保有記録法定通貨と価値の連動を目指すデジタルマネー
裏付け資産あり(株式・社債・不動産等)原則なし対象のデータ・物品にひもづく(設計による)あり(円・ドル建て資産等)
適用される主な法律金融商品取引法資金決済法設計により異なる資金決済法(電子決済手段等)
代表例不動産ST・社債STビットコイン・イーサリアムデジタルアート作品JPYC・USDC

暗号資産は資産の裏付けを持たず、価格は需給で決まります。セキュリティトークンは裏付け資産の価値と収益に基づく金融商品であり、リスクの性質も規制も別物です。

認証用の「セキュリティトークン」は同名の別物

ITの分野では、ワンタイムパスワードを生成する小型機器や認証アプリも「セキュリティトークン」と呼ばれます。名前は同じでも、本記事で扱う金融のセキュリティトークンとはまったくの別物です。

ログイン認証の機器やアプリを探している場合は、「ワンタイムパスワード トークン」などの語で調べ直してください。

セキュリティトークンの仕組み

セキュリティトークンは、発行体から発行基盤、証券会社、投資家、二次流通の場へと進む流れで動きます。既存の証券実務にブロックチェーンによる権利記録を組み合わせた構造です。

セキュリティトークンの発行から流通までの流れを示すスキーム図
  1. 発行体(不動産会社・事業会社など)が、資産や債券を裏付けにした商品を組成する
  2. 発行体はProgmatやibet for Finといった発行基盤の上で、権利をトークンとして発行する
  3. 証券会社が販売を引き受け、投資家に募集・販売する
  4. 投資家は証券会社の口座を通じて購入し、権利の記録はブロックチェーン上で管理される
  5. 購入後、投資家は証券会社を介した相対取引や、大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)が運営する私設取引システム(証券取引所を介さない売買の場)「START」などで売買する

従来の証券では、振替機関が権利の記録を一括して管理してきました。セキュリティトークンでは、この記録がブロックチェーン上の台帳に置き換わります。

記録の書き換えがそのまま権利の移転になるため、これまで証券化しにくかった資産を小口に分けて発行しやすくなりました。この小口化が、次章以降で見る商品の広がりを支えています。

裏付け資産で分けるセキュリティトークンの種類

セキュリティトークンは、裏付けとなる資産で分類すると実態をつかみやすくなります。国内で発行が先行しているのは、不動産を裏付けとするタイプです。

裏付け資産で分けるセキュリティトークン3種類の分類図
種類裏付け資産個人が買えるか国内の状況
不動産STオフィスビル・ホテル・物流施設などの不動産(信託受益権)公募案件があり購入可発行の中心。市場の大半を占める
社債ST(デジタル債)企業が発行する社債公募案件があり購入可発行事例はあるが不動産に比べ少ない
株式・ファンド持分型未上場株式・ファンドの持分など案件は限定的事例はごく限られる

不動産STは、物件を信託銀行に信託し、賃料や売却益を受け取る権利(信託受益権)を小口のトークンにして販売する形が一般的です。仕組みと分配金の考え方は、のちの章で詳しく取り上げます。

投資家・発行体それぞれのメリット

セキュリティトークンのメリットは、買う側(投資家)と発行する側(企業)で分けると整理しやすくなります。共通するキーワードは小口化です。

投資家側のメリット

  • 少額から不動産などに投資できる:公表例は大和証券の新発STが1口10,000円、三井物産デジタル・アセットマネジメント運営のALTERNA(オルタナ)が10万円〜の案件中心(2026年8月2日時点)
  • 大口資金でしか持てなかった資産にアクセスできる:都心の大型オフィスビルやホテルなど、従来は機関投資家中心だった資産の持分を保有可能
  • 権利の記録を追いやすい:保有記録はブロックチェーン上で管理され、権利関係の透明性が高い

発行体側のメリット

  • 資金調達手段が増える:銀行借入・社債・増資に並ぶ新しい選択肢
  • 投資家層を広げられる:小口化により個人を含む幅広い投資家から資金を調達
  • 保有資産を流動化できる:不動産などを保有したまま価値の一部を資金化

一方で、「すぐに売れる」ことはメリットとして断定できません。二次流通の市場は発展途上にあり、この点はリスクの章で改めて整理します。

国内の主な発行事例と取扱サービス

国内でセキュリティトークンを購入・保有できる主なサービスは次のとおりです(2026年8月2日時点の公表情報)。

サービス・会社扱う資産最低投資額の目安途中売却(二次流通)
ALTERNA(三井物産デジタル・アセットマネジメント)不動産・インフラ等10万円〜譲渡制限付きの案件が中心
大和証券不動産(オフィス・ホテル・物流施設等)中心新発の発行価格は1口10,000円が一般的(申込単位は案件による)相対取引、またはODXのPTS「START」
ODX「START」セキュリティトークンの二次流通市場該当なし(売買の場)二次流通市場そのもの

最低投資額や取扱商品は案件ごとに異なり、募集のたびに条件が公表されます。上の表は各社の公表情報の要点であり、実際の申込条件は各案件の交付資料で確認してください。

このほかにも、大手証券会社や信託銀行がセキュリティトークンの発行・販売に参入しています。購入する場合は、金融商品取引業の登録を受けた証券会社などを通じることが大前提です。

不動産セキュリティトークンの仕組みと分配金の考え方

国内で最も発行が多いのが不動産セキュリティトークンです。特定の不動産を信託銀行に信託し、賃料収入や売却益を受け取る権利(信託受益権)を小口のトークンにして投資家へ販売します。

投資家は保有口数に応じて、賃料収入などを原資とする分配金を受け取ります。公表実例ではケネディクスの不動産ST「ケネディクス・リアルティ・トークン」シリーズのうち、「W OSAKA」が予想年間分配金利回り2.5%(2025年7月23日現在)、「Kolet-1」が4.9%(2026年1月30日現在)です。いずれも募集時の想定値であり、発行体自身が一定の前提条件のもとで算出した数値で分配金の額を保証するものではないと注記しています。水準は物件の種類・立地・運営条件によって案件ごとに異なります。投資判断では金額だけでなく、その案件の交付資料に記載された試算の前提条件まで確認してください。

不動産に小口で投資する近い商品との違いも押さえておくと、選びやすくなります。

項目不動産STREIT(上場不動産投資信託)不動産クラウドファンディング
投資対象特定の物件(1件〜少数)多数の物件のポートフォリオ特定の物件・案件
価格の動き上場市場の日々の値動きを受けにくい証券取引所で日々変動原則、募集時の価格で固定
途中売却相対取引やPTSなど限定的取引所でいつでも売買可原則困難(案件による)
主な根拠法金融商品取引法投資信託及び投資法人に関する法律不動産特定共同事業法

投資先の物件を特定して選べる点と、上場市場の値動きから距離を置ける点が不動産STの特徴です。一方、換金のしやすさではREITに劣ります。どちらが優れているかではなく、いつ使う予定の資金かに合わせて選ぶ商品です。

セキュリティトークンのリスク・注意点

セキュリティトークンは金商法の規制対象ですが、元本や分配が守られる商品ではありません。損失につながる主なリスクは価格・流動性・信用・制度の4領域に分かれます。

セキュリティトークンの4つのリスクを示す概念図

価格・分配金は保証されない

裏付け資産の価値や収益が下がれば、分配金の減少や元本割れが起こりえます。募集時に示される想定値は見込みであり、確定した収益ではありません。

売りたいときに売れない可能性がある

二次流通の市場は発展途上です。大和証券の公表資料でも、売却手段は相対取引かODXのPTS「START」に限られ、流動性は限定的で売却の機会は保証されないと明記されています。

譲渡制限付きの案件では、そもそも途中売却の手段自体が限られます。購入前に、その案件の売却手段を確認してください。

発行体・裏付け資産の信用リスク

発行体や関係する事業者の経営に問題が生じた場合、分配や償還に影響が出るおそれがあります。裏付け資産が不動産であれば、空室の増加や災害も収益を左右します。

制度・税務の変更リスク

セキュリティトークンは制度がまだ動いている領域です。法律や税務の扱いが変われば、商品の条件や手取り額に影響しえます。

「暗号資産と同じで危ないのでは」という見方には、区別して答えられます。セキュリティトークンは金商法の規制対象であり、登録を受けた証券会社などを通じて販売され、株式や社債と同じ投資家保護のルールが適用されます。値動きの激しい暗号資産とはリスクの性質が異なります。

ただし、規制があることと損をしないことは別です。上の4つは、制度が整っていても残るリスクとして押さえてください。

STOによる資金調達の進め方

セキュリティトークンは、企業にとって資金調達と資産活用の手段になります。STO(セキュリティトークン・オファリング)と呼ばれる発行・募集により、社債の発行や、保有不動産を持ちながら価値の一部を資金化する流動化を、小口の投資家層に向けて実行できます。

STO検討の6工程を示す手順フロー図

検討は次の工程で進みます。

順番作業主担当確認先
1調達目的と対象資産の確定(新規調達か、保有資産の流動化か)経営企画・財務社内の財務方針
2スキームの選定と商品設計(社債型か信託受益権型か、募集条件)財務・法務証券会社・信託銀行の公表情報
3金商法上の位置づけと開示・販売規制の確認法務金融庁の公表資料・弁護士
4発行基盤と引受証券会社の選定財務・システム各発行基盤・証券会社の公式情報
5会計・税務処理の確定経理会計士・税理士
6募集・発行と発行後の権利管理体制の整備財務・IR引受証券会社

この工程で立ち止まりやすいのは、商品設計・法規制・システムの3領域が互いに絡む点です。どの資産をどのスキームでトークン化するかは、商品性だけでなく規制対応と発行基盤の選択に直結し、どれか1つの部門だけでは決めきれない構造になっています。検討の全体像を先に描いてから各論に入ると手戻りを減らせます。整理の出発点として、セキュリティトークンによる資金調達支援のページも参考になります。

セキュリティトークンに関するよくある質問

セキュリティトークンはいくらから買えますか

案件によりますが、公表例では大和証券の新発STが1口10,000円、ALTERNAの案件が10万円からです(2026年8月2日時点)。株式ほど少額ではないものの、現物の不動産投資に比べれば大幅に小口化されています。

途中で売却できますか

売却手段は、証券会社を介した相対取引か、ODXのPTS「START」などに限られます。流動性は限定的で、希望の価格・タイミングで売れる保証はありません。譲渡制限付きの案件もあるため、購入前に売却手段の確認が欠かせません。

税金はどうなりますか

セキュリティトークンは金商法上の有価証券として扱われるため、暗号資産とは課税の枠組みが異なります。ただし、具体的な税務上の扱いは商品のスキームによって変わります。募集時の交付資料で確認し、個別の判断は税理士に相談してください。

STOとICOは何が違いますか

STOは金商法の規制の下で有価証券をトークンとして発行・募集する方法で、登録業者による販売や開示のルールが適用されます。ICOは規制の枠組みが整う前に広がった独自トークンの販売手法で、投資家保護の仕組みを欠く事例が多くありました。

セキュリティトークンのまとめ

  • 有価証券をブロックチェーン上で発行・管理するデジタル証券。金商法の規制対象
  • 国内市場は1,600億円超(2025年5月時点)。不動産を裏付けとする発行が中心
  • 少額から不動産などに投資できる一方、二次流通は発展途上で売却の機会は保証されない
  • 個人の購入は金融商品取引業の登録を受けた証券会社などを経由する

企業がSTOによる資金調達・資産流動化を検討する場合は、商品設計・法規制・システムにまたがる判断が必要になり、スキームの適否は個別の事情で変わります。本記事は2026年8月2日時点の公表情報に基づく一般的な整理であり、個別の判断は弁護士・税理士などの専門家に確認してください。社内検討の土台づくりには、セキュリティトークンによる資金調達支援のページもご活用ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言・投資助言ではありません。暗号資産には価格変動リスクがあり、投資元本を失う可能性があります。個別の判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用や、AI×ブロックチェーン領域における事業開発・実装に関する情報を発信する編集チームです。株式会社Pacific Metaが、グループ累計260社以上・41カ国以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

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