米国で審議が進む包括的な暗号資産市場構造法案であるCLARITY Act(CLARITY法案)は、下院を通過し上院委員会段階に進むなど大きく前進しているものの、依然として最終的な法制化に向けた調整が続いています。現在、法案を巡る議論の焦点は、SEC(証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)の管轄分担といった技術的な内容から、大統領や議員の利益相反や倫理規定といった政治的な対立へとシフトしています。本法案は、ビットコインやステーブルコイン、DeFi(分散型金融)などを米国の正式な金融インフラに位置付ける極めて重要な土台とされており、今後の政治的妥協の行方が注視されています。
複数法案の調整と直近の議会動向
現在、CLARITY法案はすでに下院を通過しており、上院銀行委員会でも可決され、上院本会議での審議に向けた準備段階に入っています。一方で、上院農業委員会ではDigital Commodity Intermediaries Act(デジタルコモディティ仲介者法案)と呼ばれる別系統の市場構造法案が進められており、最終的な法制化に向けてはこれら複数の法案や委員会間の調整を経て、一本化するプロセスが必要となります。
直近の動きとしては、2026年7月16日にエリザベス・ウォーレン上院議員がトランプ大統領に対し、暗号資産関連資産の最新開示を求める書簡を提出しました。また、翌17日には下院金融サービス委員会がニューヨークで、CLARITY法案が金融イノベーションをどのように促進するかをテーマにした現地公聴会を開催しています。しかし、18日時点の上院銀行委員会の公式スケジュールには、本法案に関する公聴会や採決の日程は掲載されておらず、水面下での政治的な調整が続いている段階と見られます。
行政機関の姿勢としては、SECが暗号資産専門のCrypto Task Force(暗号資産タスクフォース)を設置してルール整備を進めているほか、CFTCも市場構造法の必要性を公に支持しています。さらに財務省のベッセント長官も議会に対して法案成立を促す発言を行っており、行政全体としては市場構造法が必要であるという認識でほぼ一致している状況です。
焦点は倫理規定を巡る政治的対立と票読みへ
法案成立を阻む最大の論点は、かつて議論されていたSECとCFTCの権限分担やDeFiの規制範囲から、政治家自身の利益相反と倫理規定へと移っています。民主党は大統領やその家族、議員本人が暗号資産ビジネスから利益を得る可能性についてより厳しい規制を求めており、特にウォーレン議員らは政治家の利益相反問題の整理を強く主張しています。これに対し、共和党は暗号資産市場の早期の制度整備を優先したい立場をとっています。
この政治的対立は、上院本会議での票読みにも大きな影響を与える可能性があります。上院で通常手続きにより法案を採決し通過させるためには、60票の賛成が必要です。現在、共和党は53議席を保有しているため、少なくとも7人程度の民主党議員の協力が必要となります。委員会レベルでは超党派の支持を得ているものの、本会議での倫理規定をめぐる対立が票読みに影響する可能性があり、確実な見通しは立っていません。
専門家の分析によると、夏季休会前に上院を通過する可能性は約20%、秋以降に修正を加えた上で成立する可能性は約50%、対立が長引き成立が見送られる可能性は約30%とされています。
Web3業界におけるCLARITY法案の重要性と意義
CLARITY法案は、単なる暗号資産の規制強化を目的とした法律ではありません。本法案は、ビットコイン、ステーブルコイン、DeFi、RWA(現実資産のトークン化)、そしてオンチェーン金融を、米国の正式な金融インフラとして位置付けるための極めて重要な土台となる法律として位置づけられています。
米国政府はすでに、暗号資産をどのように禁止するかではなく、どのように既存の制度の中へ組み込むかという方針に大きく舵を切っています。法案が成立すれば、これまで規制の不透明さから参入を躊躇していた従来の金融機関や事業者が、明確なルールの下で本格的にオンチェーン金融ビジネスを展開できるようになる可能性があります。短期的には政治的な駆け引きに左右されるものの、中長期的な制度化の流れは崩れないと見られており、今後数週間における政治的妥協の有無と、上院本会議の日程設定が市場の最大の注目点となります。
ポイント
- CLARITY法案は下院を通過し上院銀行委員会で可決されていますが、上院農業委員会の別法案(Digital Commodity Intermediaries Act)との一本化調整が必要です。
- 法案成立における最大の争点は技術的議論から、大統領や議員の利益相反および倫理規定を巡る政治的対立へとシフトしています。
- 上院での可決には60票が必要であり、共和党(53議席)が通常手続きを進めるには、民主党から少なくとも7人程度の賛成票を確保する必要があります。
- SEC、CFTC、財務省などの行政機関は市場構造法は必要であるという認識でほぼ一致しています。
- 本法案は、暗号資産やDeFi、RWAなどのオンチェーン金融を米国の正式な金融インフラに組み込むための極めて重要な土台の役割を担っています。