ロシアのプーチン大統領は2026年8月4日、国内における暗号資産(仮想通貨)取引所や保管機関の運営を包括的に規制する法律に署名しました。同法は取引所事業者に対して最低資本金1,500万ルーブルの登録制を義務付ける一方、商品・サービスの決済利用禁止は維持しつつ個人投資家の年間購入上限などを設定する内容です。本法律の主要条項は2026年9月1日より施行される予定で、法的透明性の向上や業界の健全化が進む可能性があります。
取引所に対する登録制度と資本要件の導入
今回成立した法律により、ロシア国内で暗号資産の売買を担う取引所事業者は、特別な登録名簿に記載された事業者のみが営業を認められる登録制へと移行します。事業者の運営基準として最低資本金は1,500万ルーブル(約2,954万円)に設定されました。1カ月に2件以上、合計350万ルーブル(約689万円)を超える売買を成立させる「系統的な取引」を行う事業者は、金融市場の自主規制機関(SRO)への加入が義務付けられます。
不正取引への対策も強化されており、未登録事業者による疑わしい取引を検知した場合、銀行は資金移動を停止する義務を負います。一方で、暗号資産保有者の権利に関しては、過去の資産の申告歴を問わず司法上で保護される規定が盛り込まれました。
決済制限と個人投資家保護のための購入上限
国内決済における制限については、ロシア国内で暗号資産を商品やサービスの決済手段として使用すること、および決済が可能であるかのような広告・宣伝活動を行うことは従来通り禁止されます。ただし、非居住者との貿易契約に基づく決済や、マイニングで獲得した暗号資産の使用、システム利用料の支払いといった一部の例外は認められています。
投資家保護の観点からは、個人投資家(非適格投資家)が仲介業者を通じて購入できる暗号資産が流動性の高い銘柄に限定されました。また、1事業者あたりの年間購入金額の上限は30万ルーブル(約58万円)に制限されます。適格投資家はこの購入上限の対象外とされていますが、両区分ともに購入前の適合性テストの受検が必須となります。
段階的な施行スケジュールと金融機関への影響
新法の主要条項は2026年9月1日に発効しますが、既存事業者の移行期間として2027年7月1日までは無登録での営業が容認されます。また、資金移動の制限や非居住者向け保管機関の運用枠組みは2027年7月1日から適用され、デジタル金融資産(DFA)の発行・流通に関する技術的規定などは2027年9月1日に施行される予定です。
こうした法整備の動きを受け、ロシア最大手銀行のスベルバンクは2026年12月までに暗号資産取引インフラの整備を目指しているとされています。明確な規制枠組みが整備されたことで、今後は伝統的な大手金融機関による市場参入やインフラ構築が本格化すると見られます。
ポイント
- プーチン大統領が包括的な暗号資産規制法に署名し、主要条項が2026年9月1日に施行されます。
- 取引所事業者には最低資本金1,500万ルーブルの登録制度が課され、業界のコンプライアンス向上が図られます。
- 国内での商品・サービス決済は引き続き禁止される一方、対外貿易やマイニング獲得分の利用など一部取引は例外として容認されます。
- 個人投資家保護のため、流動性の高い銘柄への限定や1事業者あたり年間30万ルーブルの購入上限が導入されます。
- スベルバンクによる取引インフラ整備など、法制化をきっかけとした既存金融機関の事業展開の面で注目されます。