イーサリアムの開発者チームが、将来的な量子コンピューターによる暗号解読リスクに備え、新しいデポジット契約案をGitHub上のEIPリポジトリへ提出しました。現行のデポジット契約はBLS12-381方式に固定されており大きなポスト量子鍵(量子コンピューターに対抗する暗号鍵)を扱えないため、可変長の公開鍵や認証情報に対応する設計が盛り込まれています。さらに、従来のBLS方式の新規受付を一方通行で停止する移行フェーズも設計されました。本提案は現在ドラフト段階であり、コア開発者による正式な合意や実装日程は未定となっています。
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可変長の公開鍵と識別子を採用した新契約の仕組み

ケバンドレイ・ウェダーバーン氏ら耐量子関連の提案に携わってきた開発者チームは、仮番号EIP9999として新たな契約案を登録しました。現行のデポジット契約はBLS12-381方式のサイズに固定されていますが、新契約では可変長の公開鍵と認証情報を扱える仕様に変更されます。
新しい契約では、デポジットを実行するたびに「スキーム」と呼ばれる識別子を指定します。スキーム0は従来のBLS署名を示し、それ以外の値は将来採用される暗号方式のために予約される設計です。また、デポジットデータはEIP-7685の仕組みに基づいてコンセンサス層(合意形成を担う層)へリクエストとして渡されます。
あわせて、既存の契約が採用していたマークルツリー方式は廃止されます。EIP-6110で導入されたログベースの検証手法を踏襲することで、旧方式で求められていた検証用ハッシュ値のフィールドが不要になります。契約の預け入れ関数には、「スキーム」「公開鍵」「引き出し用資格情報」「資格メタデータ」の4つの引数が設定されています。
3段階のフェーズ管理とBLS方式の不可逆な廃止
提案された契約では、状態が3段階のモードで管理されます。導入直後は預け入れを受け付けない無効状態から始まり、稼働が開始されると既存のBLS方式を受け入れる状態へと移行します。最終段階ではBLS方式の新規受付を停止する廃止状態に切り替わります。
このモード遷移は一方向にしか進められない設計となっています。廃止状態への切り替えを取り消し不可とすることで、量子コンピューターが実用化された後にBLS方式の新規登録が再び有効化される事態を防ぐ狙いがあります。
なお、本提案はEIP-6110やEIP-7251といった複数の既存提案への依存が明記されていますが、現時点ではドラフト段階にとどまります。活性化や廃止の具体的な日時は決まっておらず、コア開発者による正式なレビューや採用合意、正式なEIP番号の確定などは今後のプロセスとなっています。
ポイント
- 将来の量子コンピューターによる署名解読リスクに備え、可変長公開鍵を扱える耐量子デポジット契約案が提出された点
- スキーム識別子の導入により、将来登場する新たな暗号方式を柔軟に追加できる余地が確保されている点
- BLS方式の新規受付停止が取り消し不可能な一方向の設計とされ、量子計算機の実用化後における安全性が考慮されている点
- 現在はドラフト段階であり、正式なEIP番号の確定やコア開発者による採用合意、実装スケジュールは未定である点