レイヤー1ブロックチェーン「アバランチ(Avalanche)」を支援するアバランチ財団は、ネットワークアップグレード「ヘリコン(Helicon)」をFujiテストネットで有効化しました。今回のアップグレードでは6件のアバランチ・コミュニティ・プロポーザル(ACP)が採用され、Cチェーンの処理方式とステーキングエコノミクスの両面で大幅な仕様変更が行われています。スマートコントラクトの実行効率化やスパム抑制に加え、バリデーターの参入障壁緩和と長期ステーキングのインセンティブ強化が組み込まれており、ネットワーク全体の基盤強化に向けた重要な取り組みと見られます。
Cチェーンにおける実行方式の効率化と動的なガス価格調整
スマートコントラクトや分散型アプリケーション(dApps)の運用基盤であるCチェーンでは、処理能力の改善とスパム対策を目的とした2つの提案が適用されました。
1つ目の「ACP-194」では、「継続実行(Continuous Execution)」が導入されました。従来はブロック内のトランザクションを実行・検証した後にコンセンサスで承認を行っていましたが、新たな方式では必要最低限の確認を行った段階でブロックをコンセンサス承認し、トランザクションの実行を後から順次進めます。承認処理と実行処理が並行して進むため、一方の完了を待つ必要がなくなり、ネットワーク全体の処理効率向上が期待されています。
2つ目の「ACP-283」では、最低ガス価格を動的に調整する仕組みが導入されました。現在は固定値である最低ガス価格について、各バリデーターが希望値を設定し、ステーク量に応じて価格が段階的に収束する設計に変更されます。従来の固定価格では防止しにくかったスパムトランザクションを抑止することが狙いです。
ステーキング制度の刷新とインフレ率の抑制効果
プライマリーネットワークの検証を行うバリデーター向けには、運用の柔軟性とネットワーク安定性の維持を目指す4つの提案が導入されました。
「ACP-236」では、更新周期や報酬の自動複利比率を設定できる自動更新ステーキングが導入されます。「ACP-273」では最低ステーキング期間が336時間(2週間)から48時間へと短縮され、資本効率の向上と参入障壁の低下が見込まれます。
一方で、ネットワークの安定性を担保するため、「ACP-267」では報酬受け取りに必要な稼働率要件が80%から90%へと引き上げられます。この90%要件は、2026年4月1日以降に開始しヘリコン有効化時点で終了していないステーキング期間等に適用される見通しです。
さらに「ACP-285」では、報酬算出に用いる最低消費率を10%から7.5%へ引き下げることで短期ステーキングの報酬率を抑え、長期ステーキングを優遇する仕組みに改定されます。この調整により、年間インフレ率は従来の仕組みと比べて約0.5ポイントから最大1ポイント程度低下する可能性があると試算されています。
今後のメインネット実装に向けた見通し
今回公開されたノード実装「AvalancheGo v1.15.0-fuji」はFujiテストネット向けのものであり、メインネットにおける有効化時期は現時点では明らかになっていません。メインネット向けのアップグレードに必要な対応版ソフトウェアは今後公開される予定です。
ポイント
- Fujiテストネットにおいて、6件のコミュニティ提案(ACP)を含む大型アップグレード「Helicon」が有効化された点
- Cチェーンに「継続実行」と動的最低ガス価格調整が導入され、処理効率の向上とスパム防止の両立が図られた点
- 最低ステーキング期間が48時間に短縮される一方で報酬受取の稼働率要件が90%に引き上げられ、運用効率とネットワーク安定性のバランスが再設計された点
- 報酬体系の変更により長期間のステーキングが優遇され、年間インフレ率が低下する可能性がある点