米証券取引委員会(SEC)は、暗号資産や予測市場といった革新的な資産クラスに投資する、あるいは新たな投資戦略を採用する新型ETF(上場投資信託)の規制のあり方について、一般からの意見募集を開始しました。この意見募集は、従来の単純な価格連動型からステーキングやオプション取引などを組み合わせた複雑な商品へと移行しつつあるETF市場の急拡大を受けたものです。SECは今後60日間にわたり、既存の規則が新型ETFに十分対応できているかや登録手続きの見直しが必要かどうかについて幅広く意見を募り、今後の規制の枠組みを検討していくと見られます。
新型ETFの規制見直しに向けた背景と目的
SECが開始した意見募集は、連邦官報への掲載後60日間にわたって実施されます。SECの発表によると、このパブリックコメントの募集が開始されたのは2026年6月30日(現地時間)とされています。今回の意見募集では、これまでになかった特徴を持つ新型ETFについて、現行のルールがなお妥当であるのか、また新商品が市場に流入する中で登録手続きの見直しが必要かどうかなどについて市場関係者から意見を求めています。
今回の動きは、5月にSECのポール・アトキンズ委員長が、20件以上の保留中となっている申請の立ち上げを一時停止する声明を発表したことに続くものです。
背景には、ETF市場の急速な成長があります。SECによると、ETFの運用資産残高は2019年の約4兆ドル(約650兆円)から、2025年末には12兆ドル超(約1950兆円超)へと急拡大しています。市場が拡大し、従来の株式や債券といった枠組みでは捉えきれない商品が相次いで登場していることから、規制当局として新たな線引きを検討する必要性が生じていると見られます。
多様化する暗号資産ETFの投資戦略
近年、暗号資産ETFの発行体は、単純に価格に連動する商品から一歩踏み出し、より専門的で複雑な投資戦略を取り入れた商品を相次いで提案またはローンチしています。
例えば、決済用ステーブルコインの準備資産を念頭に置いた、米国債中心のファンドであるプロシェアーズのジーニアス・マネーマーケットETFが6月に発表されたほか、グレイスケールはステーキング報酬の獲得を目指すハイパーリキッド・ステーキングETPを立ち上げました。
ビットコイン関連の商品でも細分化が進んでおり、1月にはブラックロックがオプションを活用したビットコイン収益型ETFであるビットコイン・プレミアム・インカムETFを提案し、4月にはゴールドマン・サックスが現物ビットコイン商品とカバードコール戦略を組み合わせたファンドを打ち出しました。
さらに、フランクリン・テンプルトンが今月初めに提案した、米国株から得られる配当をビットコイン関連投資へ機械的に再投資する2本のETFや、1月にビットワイズがローンチした、ビットコインと金、貴金属、鉱山株を組み合わせたアクティブ運用型ETFなど、伝統資産とデジタル資産を融合させた実験的な商品も登場しています。
業界にとっての重要性と今後の影響
今回のSECによる意見募集は、暗号資産や予測市場を組み込んだ金融商品が、米国の主要な投資市場においてどのような位置づけとなるかを決定づける重要な契機になる可能性があります。
これまでは個別の申請ごとに判断が下されていましたが、SECが新型ETFとして一括した規制の枠組みを検討し始めたことは、今後の商品開発や上場プロセスの標準化に影響を与えると考えられます。投資家保護を確保しつつ、金融イノベーションをどのように継続させるか、当局と市場関係者との対話の行方が注目されます。
また、SECは先週、米商品先物取引委員会(CFTC)とも共同で、証券市場とデリバティブ市場にまたがるポートフォリオ・マージン規則の調和について市場から意見を求めており、複数の当局が連携して市場の近代化を進める姿勢を示しています。
ポイント
- 米SECは、暗号資産や予測市場などを対象とする新型ETFの規制見直しに向け、60日間の意見募集を開始しました。
- 5月にポール・アトキンズ委員長が20件以上の申請を一時停止したことを受け、本格的なルール整備に向けた議論が始まっています。
- ETF市場は2019年の約4兆ドルから2025年末には12兆ドル超へと急拡大しており、商品の複雑化に伴う規制の必要性が高まっています。
- 暗号資産ETFでは、ステーキングやオプション取引、伝統資産との組み合わせなど、単純な価格連動にとどまらない多様な戦略が登場しています。
- 今回の意見募集は、将来的な登録手続きの標準化や、投資家保護とイノベーションの両立に向けた規制のあり方を決定づける重要なプロセスになる可能性があります。