Canton Networkが拓く伝統金融のオンチェーン化:プライバシー保護と実ビジネス主導の次世代インフラ

Digital Asset社が開発する「Canton Network(カントン・ネットワーク)」は、伝統的な金融機関の実ビジネスをオンチェーンへ移行させるパブリック型レイヤー1ブロックチェーンとして注目を集めています。WebX 2026のセッションにおいて同社CEOのYuval Rooz氏が語った内容によると、スイスの連邦制に着想を得た多層構造により、オープンなネットワークでありながら機関投資家が求める高いプライバシー保護を実現しています。すでに世界最大の証券保管機関であるDTCCとの連携による米国株式・米国債の本番取引が開始されたほか、日本国債を活用したデジタル担保管理の概念実証(PoC)も進められており、伝統金融とブロックチェーンの本格的な融合が実用段階に入ったことを示しています。

パブリックなインフラとプライバシー保護を両立する多層設計

伝統的な金融業界では、顧客情報や取引記録などの機密データを公に開示することはビジネス上および規制上の理由から不可能です。Canton Networkは、機関投資家が必要とするプライバシー機能を実装したパブリック型ブロックチェーンとして設計されています。

ネットワークのアーキテクチャは、スイスの連邦制(カントン=州)の仕組みから着想を得ており、インフラ自体は誰でもアクセス可能なパブリック型でありながら、その上で展開されるアプリケーション層でパーミッション型・パーミッションレス型のルールを自由に設計できる多層構造となっています。この設計により、従来の暗号資産チェーンのような「完全公開か非公開か」という二者択一を回避し、銀行のオンラインバンキングのようにアクセス権限を細かく制御しながら、分散型インフラの利点を享受することが可能となっています。

DTCCや日本国債との連携に見る実ビジネスのオンチェーン化

Canton Networkでは、すでに世界的な金融インフラとの連携が進んでいます。約100兆ドル相当の資産を保管する世界最大の証券保管機関であるDTCC(The Depository Trust & Clearing Corporation)との提携により、米国株式および米国債という主要な資産クラスのオンチェーン本番取引が開始されています。現在、50社以上の主要資本市場参加者が同ネットワーク上でサービス展開を進めています。

日本市場においても、SBIホールディングスによる出資に続き、みずほフィナンシャルグループ、野村ホールディングス、JSCC(日本証券クリアリング機構)、金融庁などが共同で日本国債(JGB)を活用したデジタル担保管理のPoCを発表しています。米国債と日本国債という世界的に重要な担保資産が同一プロトコル上に乗ることで、世界最大級の取引規模を持つドル円キャリートレード(低金利の円で調達した資金を米ドル建て資産で運用する取引)などをオンチェーンでリアルタイムに完結させる基盤が整うと見られています。

実際の取引処理と手数料実績に裏付けられた金融基盤

他プロトコルとの競合について、Rooz氏は単なるスペック比較ではなく「実際にビジネスが運用され、手数料が支払われているか」を重視していると強調しています。現在、Canton Network上では毎日4,000億から5,000億ドル規模の資産取引が処理されており、日次の手数料収入においてEthereumやSolanaといった主要チェーンを上回る実績を上げているとされています。

機関投資家による実際のビジネス運用がエンドツーエンドでオンチェーンに移行していくことで、将来的にはこれまで機関投資家に限られていた金融インフラへの投資機会が個人投資家にも広がっていく可能性があると見られています。

ポイント

  • スイス連邦制に着想を得た多層構造により、パブリックなインフラと機関投資家が必要とするプライバシー保護・規制対応の両立を実現している点で注目されます。
  • 世界最大の証券保管機関であるDTCCとの提携により、米国株式および米国債のオンチェーン本番取引が開始されており、実ビジネスの移行が具体化しています。
  • 日本においても、みずほ・野村・JSCC等との日本国債のデジタル担保管理PoCが進められており、ドル円キャリートレードなどの国際金融取引をオンチェーン化する可能性が示されています。
  • 毎日4,000億〜5,000億ドル規模の取引が実際に処理されており、実効性の高い金融インフラとして稼働している点で評価されています。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用や、AI×ブロックチェーン領域における事業開発・実装に関する情報を発信する編集チームです。株式会社Pacific Metaが、グループ累計260社以上・41カ国以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

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