暗号資産ステラ(XLM)の開発と普及を主導するステラ開発財団(SDF)は、新プロトコルアップグレード「アダプター(Adapter)」(Protocol 28)をメインネットで稼働開始したと発表しました。今回のアップグレードでは、コンセンサス処理を高速化する仕組みや、スマートコントラクトの一括更新を可能にする機能など、開発者に重点を置いた複数の改善が実装されています。ネットワークの強みである高速性と低コストを維持しながら、実用的な金融アプリケーションに適したプラットフォームへの進化を目指すものとして注目されます。
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コンセンサス処理の効率化によるスループットの向上
今回のアップグレードにおける目玉の一つが、コアプロトコル改善提案である「CAP-83」の実装です。
ステラのブロックチェーンでは、ネットワーク上のバリデータが数秒ごとに新しい「レジャー(ビットコインのブロックに類似し、アカウント残高や流動性プール、スマートコントラクトのデータなどを記録する仕組み)」について合意を形成しています。これまでは、バリデータが処理を進める前に各レジャーに組み込む取引セット全体を受け取る必要があり、ネットワーク全体で取引セットを共有する工程に時間を要していました。
CAP-83の導入により、バリデータは取引セットの完全な受信を待たずに投票を開始できるようになりました。あわせて、遅延した取引セットや無効な取引セットを適切に破棄する仕組みも導入されており、混雑時におけるスループット(一定時間内に処理できる作業量やデータ)の向上が見込まれます。これにより、ネットワークの規模が拡大した場合でも、低コストで円滑な稼働を維持することが可能になります。
複数コントラクトの一括更新と安全なデータ移行への対応
スマートコントラクトの運用面においては、「CAP-85」と「CAP-86」という二つの機能が導入されました。
ステラ上の多くのアプリケーションやプロトコルでは、同一の基盤コードを共有するコントラクトのコピーが多数展開されています。従来は共有コードを更新する際、各インスタンスを一つずつ更新する必要があり、一度の取引で完了できないことから一部のコントラクトが古いコードのまま動作する過渡期が生じ、不整合のリスクを抱えていました。CAP-85の実装により、共有コードの参照を更新するだけで展開済みの全コントラクトが同時に更新されるようになり、部分的な不整合のリスクが排除されます。
また、CAP-86ではコントラクトの更新やデータ移行を容易にするため、不足または余分なフィールドが存在してもエラーにせず処理する「スパース(sparse)」ホスト関数が追加されました。これにより、コントラクトのデータ構造を変更する際に新旧のデータ形式が一時的に混在しても安全にスキーマ変更を進めることが可能になります。
金融アプリケーション基盤としての機能強化と採用実績
ステラ開発財団は、今回の改善について、ネットワークの特長である「高速性」と「低コスト」を損なうことなく、実用的な金融アプリケーションに適した高性能かつ開発者にとって使いやすい環境へ進化させる方針を継承したものと説明しています。
ステラのネットワークは実際の金融サービス基盤としても活用が進んでおり、最近の事例では国際送金大手のマネーグラムが独自の米ドル建てステーブルコイン「MGUSD」の基盤としてステラを採用しました。MGUSDはストライプ傘下のブリッジが発行体を担っており、実利用が進む中で、今回のような開発環境および処理能力の向上は開発者や事業者にとって利便性を高める基盤強化となります。
ポイント
- ステラ開発財団が新プロトコル「Adapter」(Protocol 28)をメインネットで稼働開始し、コンセンサス処理の高速化と開発者向け機能の大幅な改善を実施した点で注目されます
- CAP-83により取引セットの完全受信を待たずにバリデータの投票が可能となり、ネットワーク混雑時のスループット向上と低コストな稼働維持が図られた点で重要です
- CAP-85とCAP-86の導入により、同一コードを共有する複数スマートコントラクトの一括更新や安全なデータ移行が可能になり、開発・運用時の不整合リスクが低減された点で注目されます
- マネーグラムのステーブルコイン「MGUSD」採用に見られる実用的な金融アプリケーションの基盤として、高速性と低コストを保ちながら開発環境を強化した点で意義があります